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誤読と曲解の映画日記

映画鑑賞日記です。

俺はセクシーなデブなのさ/『スクール・オブ・ロック』

うそくささのない物語

ロックとは感情を爆発させるためのものだ。映画『スクール・オブ・ロック』を観て、今さらながらにそのことを再認識した。日々の生活の中で自分の中に溜まっていく不満や不平、やり場のない怒りや憤り。そういったネガティブな感情を言葉に置き換え、激しいリズムとメロディに乗せ、爆発させる。それがロックだ。

ロックは怒りを爆発させるものだと、本作の主人公のデューイは子どもたちに伝える。そして子どもたちは、日常生活の中で抱える不満や怒りを言葉にして歌ってみる。その場面に映し出される子どもたちの表情は、実に楽しそうで晴れやかだ。本来は怒りや不満といったネガティブな感情を表に出しているはずなのに。ロックにはネガティブな感情を昇華させる力があることを示しているのだ。

本作では暗い表情、不安な表情を浮かべていた子どもたちが、最後には必ず楽しそうで晴れやかな表情を浮かべるのが印象に残る。人々が抱える鬱屈した暗い感情さえも、ロック的な言葉にして、ロック的な歌として声に出す。すると、そこには人を輝かせる力、さらには世界を変える力が宿る。映画『スクール・オブ・ロック』を観終わったあと、すっきりと晴れた青空のようなカタルシスを感じながら、そんなことを思った。


映画『スクール・オブ・ロック』はタイトルのとおり、「ロックの学校」の物語。売れないロックミュージシャン・デューイが友人のネッドになりすまして臨時教師となり、名門私立小学校に通う10歳の子どもたちにロックを教える。そして「スクール・オブ・ロック」という名のバンドを組み、バンド・バトルで優勝することを目指す、というストーリー。

デューイの行動原理は、もともとが私利私欲だ。だから、ロックを通じて音楽の素晴らしさを子どもたちに伝えるとか、クラスの絆を再確認するとか、そういったありがちな設定やうそくさい目的が本作に満ちていないところが良い。純粋にロックを演奏する喜びが描かれているのが素晴らしい。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

ステージで最高の演奏をすること

映画『スクール・オブ・ロック』、ネッドの部屋に転がり込んでいた主人公のデューイが家賃をためこみ、その支払いを催促されるところから物語がはじまる。バンド・バトルに出場して優勝すれば、賞金の2万ドルが手に入る。そこでデューイは自分のバンドを率いてバンド・バトルに出場し、賞金を手に入れることを目論むが、こともあろうに自分のバンドからクビを言い渡されてしまう。

なぜならば、あまりにも独りよがりな演奏をしてしまい、ライブハウスの客からも自分のバンドのメンバーからも引かれてしまうほど、デューイは暑苦しいほどのロックバカなのだ。冒頭にデューイのバンドがステージで演奏する場面がある。デューイはあまりにも自分の演奏に入り込み、果ては客席へダイブしてしまう。けれども、デューイを誰も受け止めてはくれず、デューイは床へ直接墜落してしまう。

友人の家に戻ったデューイ。そこに一本の電話がかかってくる。友人ネッド宛にかかってきた名門私立小学校の臨時教師の採用の電話だ。そこでデューイはネッドになりすまして臨時教師となり、小学校に教師として潜りこむ。そこで受け持った生徒たちの音楽の才能に気づいたデューイは、生徒たちでロックバンドを組んで、バンド・バトルへの出場を目指す。

デューイは子どもたちに伝える。「バンド・バトルで優勝することよりも、ステージで最高の演奏をすることの方が大事」。けれども、生徒たちでバンドを組んだのはバンド・バトルで優勝して賞金2万ドルを手に入れることが目的なので、その事情を知っているわたしたちから見れば、その言葉はうそくさくも感じる。

ただ、デューイが子どもたちにロックを教えるのも、ため込んでいた家賃を賞金で支払うためだ。現実的で切実な理由がそこにある。だからこそ、デューイによる本気のロック指導がはじまる。

すべての子どもたちに役割を

ステージで最高の演奏をするため、デューイは教室のすべての子どもたちにそれぞれの役割を割り振る。楽器の担当はもちろん、全体を取り仕切るマネージャー、スモークや照明といった演出、果ては校長の見回りを監視するための警備係まで。

子どもたちすべてに役割を割り振るのは、ひとつには不満分子を生み出さないようにするためだろう。何の役割も与えらないまま不満をため込み、普通の授業をしていないと校長に通報されるのは何としても防ぎたい。だから、子どもたちすべてに役割が必要だ。けれど、すべての子どもたちに役割を与えることで、結果として誰もが世界を変えるために必要とされていることを教えているのだ。


けれども、キーボード担当の男子生徒ローレンスは、キーボードに抜擢されたあと、食堂でデューイに告げる。自分はイケてないしモテないからロックバンドには向いていない、だからやめさせて欲しいと。そこでデューイはローレンスにこう伝える。

お前の演奏はイケてるぞ。たとえ世界一ダサくても、ロックをやれば超人気者でひっぱりだこだ。学校一人気者になる。客席にダイブしても誰も受け止めてくれず、自分のバンドから追い出されたデューイの言葉なので、恐ろしく説得力がない。けれども、ローレンスはそれをまっすぐに受け止め、キーボードの練習に邁進するのだ。

また、コーラスに抜擢された女子生徒トミカ。自らの歌唱力を隠して、はじめは裏方に甘んじていたが、やはりコーラスをやりたいとデューイに懇願して、コーラスメンバーに追加される。けれども、最初のステージに立つ前に自信を失くしてしまう。自分は太っているからステージに立てばきっとみんなに笑われてしまうと。

そんなトミカに向かいデューイは告げる。君は人がうらやむ才能を持ってるんだ、すごい歌唱力だ。嘘じゃない。アレサ・フランクリンだってデカいが、歌いだすとみんな感動してアレサにほれ込む。さらにデューイはトミカに伝える。体重に悩む者はまだいると。そしてそれは俺なんだと。だが、俺がステージに立てば、みんな拍手喝采だ。俺はセクシーなデブなのさ。

デューイがニセ教師になった経緯を考えれば、この言葉にもそれほどの説得力はない。けれども、デューイはトミカを励ます。トミカの才能を認め、ユーモアで包み込む。トミカは自信を取り戻し、ステージに立つのだ。


そんなこんなで、ついに我らが「スクール・オブ・ロック」のメンバーは、バンド・バトルのステージに立つことになる。その最後のステージに立つ直前、ギターのザックの作った曲を使うと決める。ザックはなかなか自分の曲が作れないでいた。そこで、メンバーたちはステージでデューイの作った曲を披露する手はずだった。けれど、ついにようやくザックの曲が完成した。

そこでデューイはザックに伝える。俺には才能がない。それを認める。お前の曲の方が最高にロックだ、と。みんなはその曲は練習不足だからできないかもしれないと心配顔になる、けれどもデューイはみんなに伝えるのだ。目的は優勝じゃなく、最高のステージだ。ザックの曲ならロックできるんだ。

そもそもの理由や動機はどうあれ、デューイは本気で子どもたちにロックを教えて、本気で最高の演奏をすることを目指した。すべての子どもたちに役割を与え、子どもたちが不安を抱えればお前ならできると励まし続ける。そんなふうにデューイが本気で最高のステージをつくり出そうとする姿は、すがすがしさを覚える。“本気さ”が伝われば、どんなことからでも人は学ぶことができるのだというメッセージがそこにあるからだ。

デューイというキャラクターがあってこそ

デューイはロックバカと言ってよいほど、暑苦しいまでロック好きな男だ。その暑苦しいほどのパフォーマンスのせいで、自分の結成したロックバンドからクビを言い渡されてしまうほどに。

デューイが生徒たちにロックを教えるときの”顔芸”と体の細かな動きが面白くて、ひとつの見所でもあるのだが、これがデューイの本気さを物語っている部分でもある。そんな”顔芸”と体の動きは、子どもたちにロックの精神と演奏技術を伝えるためのもの。それを見ていると、こちらまで本物の学校で本物の先生から本物の授業を受けているようにさえ感じられてくる。俳優の表情や体の動きって、映画にとって本当に大事なことなんだなあとわかる。

物語の最後、デューイはバンド・バトルで演奏しているうち、再び客席へダイブしてしまう。でも、今度はしっかりと客席を埋めた客たちが両手を伸ばしてデューイを受け止め、再びステージへと押し戻す。デューイもまた、誰もが認めるロッカーになった瞬間だ。

暑苦しい男が苦手な人にはオススメしない。ただ、デューイは暑苦しいだけではない。必死さ、本気さが画面からあふれてくる。ため込んだ家賃を払うため、はじめは子どもたちを利用して賞金を手に入れるつもりだったのが、いつしか本気で最高のステージをつくろうと必死に奮闘する。

私利私欲に突き動かされたさえない男が奮闘する姿だからこそ、滑稽さと悲哀さから生まれる真剣さが胸に迫るのだ。本作の主人公が若いイケメンや美女ロッカーだったら、単なる普通の感動物語にすぎなくなってしまうだろう。『スクール・オブ・ロック』はセクシーなデブ・デューイというキャラクターがあってこその物語なのだ。

映画『スクール・オブ・ロック』は、熱い真夏にオススメの熱い一本と言える。

参考

1)Yahoo!映画/『スクール・オブ・ロック
movies.yahoo.co.jp

2)映画.com/『スクール・オブ・ロック
eiga.com

3)Filmarks/『スクール・オブ・ロック
filmarks.com


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