誤読と曲解の映画日記

映画鑑賞日記です。

お前たちも真剣に闘っているか? 子どもたちが応援したくなるくらいに/『ナチョ・リブレ 覆面の神様』

本当のヒーローとは 映画『ナチョ・リブレ』は、教会の修道院で働く料理人でもある修道士イグナシオがプロレスラーとなって活躍する姿を描くコメディ。主人公のイグナシオは、修道院の子どもたちに満足な食事を与えられないことに不満を抱いている。教会が料…

俺はセクシーなデブなのさ/『スクール・オブ・ロック』

うそくささのない物語 ロックとは感情を爆発させるためのものだ。映画『スクール・オブ・ロック』を観て、今さらながらにそのことを再認識した。日々の生活の中で自分の中に溜まっていく不満や不平、やり場のない怒りや憤り。そういったネガティブな感情を言…

青い空が戦争の傷跡を見つめる/『長屋紳士録』

心にさざ波を立てる作品 映画『長屋紳士録』は、東京の下町を舞台にした”拾い子"をめぐる人情劇。現代のわたしたちの目から見ると、”拾い子”を引き取ったおたねが男の子へ向けるまなざしは、時に冷たく感じるほどにドライだ。だからこそ、後半になってようや…

救いようのない泥沼の中のかすかな希望のようなもの/『イカとクジラ』

家族関係がきりきりと音を立ててねじれていく 映画『イカとクジラ』は、もともとこじれかけていた家族が、母親の浮気をきっかけに空中分解してしまい、さらに家族関係がきりきりと音を立ててねじれていく過程を描く。物語は最後まで家族の抱える問題がこじれ…

「今月のまとめ」はじめました/7月のまとめ

「今月のまとめ」はじめました こんにちは。『誤読と曲解の映画日記』管理人の”のび”です。このブログは基本的に毎月2回、第1と第3の土曜日に更新するブログです。たまに、それ以外の祝日にも記事を更新することもありますが、それでも月に3回程度の更新です…

まっすぐに海へ/『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』

死ぬ前にどうしても見たい風景 映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』は、冒頭からラストの直前まで、とにかく「動」の映画だ。登場人物たちは絶え間なく動き回り、状況は刻一刻と変化していく。息つく暇もなく、ストーリーは目まぐるしく展開し、わたした…

人生に変化をもたらすものは、密やかに忍び寄る。まるで本を読むときのように。/『リスボンに誘われて』

1冊の本が人生を変える物語 1冊の本と出会い、そこに書かれた物語をくぐり抜ける。その過程で読み手の心境やものの見方に少しずつ変化が起こり、その本を読んだあとでは読み手の人生の有り様や世界の成り立ち方が大きく変わって見える。そんなふうに1冊の本…

何かにトライするのなら徹底的にやれ。でなきゃやるな/『酔いどれ詩人になるまえに』

チナスキーは挑発する 映画『酔いどれ詩人になる前に』は、観る者を挑発する。お前は切実なものを抱えているか? それをしないではいられない何かを持っているか? それを失ったら、自分で自分を保つことができるか? そんな挑発が画面からあふれる一本だ。…

意図せざる悪と代償/『トゥルー・グリット』

単なる西部劇映画としても楽しめるが…... 主人公は父親を殺された14歳の少女マティ。マティは頭の回転がとても速くて、行動力も度胸もある少女。そんなマティは父親を殺して逃亡した犯人チェイニーを捕まえるために、真の勇気を持つと評判だが飲んだくれの保…

Filmarks(フィルマークス)をはじめてみました

Filmarks(フィルマークス)をはじめてみました Filmarks-フィルマークス-( https://filmarks.com )をはじめてみました。Filmarksというのは「映画の感想を書いてシェアするソーシャル映画レビュー」サービス。 つまり、観た映画の感想をweb上に書いて登録…

あふれんばかり情けなさがあふれる世界に差し伸べられた温かな手/『ファーゴ』

転がり続ける雪玉の行方 コーエン兄弟が監督をつとめた映画『ファーゴ』は陰惨で血まみれの映画だが、見終わったあとは不思議と温かな気持ちになる映画。男たちの情けなさや弱さや欠点をこれでもかと見せられた末に、女性警察署長の地に足のついた性格と行動…

奇妙でおかしく、混乱していてあたたかい/『ブルー・イン・ザ・フェイス』

ひとつの理想の街 『ブルー・イン・ザ・フェイス』は、作家ポール・オースターが『スモーク』に続き、脚本を書いた作品。舞台は『スモーク』と同じように、オーギー・レンがニューヨークのブルックリンで営むタバコ屋「ブルックリン葉巻商会」。その店にやっ…

嘘と煙/『スモーク』

凹凸を抱える人間が紡ぎ出す物語 映画『スモーク』は、アメリカの作家ポール・オースターが脚本を書いた作品。ニューヨーク・ブルックリンの街角にあるタバコ屋を主な舞台に、タバコ屋を営むオーギーや店にやってくる客たちが織り成す物語。タバコ屋を営むオ…

脱獄と深い森とが生んだどこかおかしな友情/『ダウン・バイ・ロー』

どこかおかしな友情 ジム・ジャームッシュ監督の作品『ダウン・バイ・ロー』。『パーマネント・バケーション』や『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に比べ、ストーリー性はよりはっきりとしている。まずこの作品に登場するのは、ポン引きをしているチンピ…

異世界をさまよう異邦人/『ストレンジャー・ザン・パラダイス』

心の故郷を求めて ジム・ジャームッシュ監督作品『ストレンジャー・ザン・パラダイス』。主人公はニューヨークで自堕落な生活を送るハンガリー人の若者ウィリー。ウィリーはギャンブラーとして生活している。物語はそんなウィリーのいとこのエヴァが、ハンガ…

永遠の夢は虹の向こうに/『パーマネント・バケーション』

”今この場所”から逃げ出してしまう物語 ジム・ジャームッシュ監督作品『パーマネント・バケーション』、青年期特有の孤独や倦怠、無力感が画面からあふれる作品。青年期特有の孤独や倦怠、無力感。それは、自分でも理由のわからないまま、まわりの世界に倦み…

友情や感動を押し付ける説教はいらない/『ドラえもん のび太の人魚大海戦』

大山のぶ代原理主義ではない 映画『ドラえもん のび太の人魚大海戦』を観た。 わたしはドラえもん映画は大好きで、大山のぶ代がドラえもんの声優を務めていた時代の映画はすべて観ている。しかし、大山のぶ代から声優が交代して以降のドラえもん映画は、いっ…

年齢を重ねても前向きに生きる姿が輝く/『カルテット! 人生のオペラハウス』

「老人は弱虫では生きられない」 映画『カルテット! 人生のオペラハウス』は、ジュゼッペ・ヴェルディ生誕200周年記念作と銘打ったとおり、ヴェルディ作曲のオペラ『リゴレット』をはじめ、華やかな音楽に彩られた作品。舞台は、第一線から引退した元音楽家…

本を読むこと、語り合うこと/『ジェイン・オースティンの読書会』

本を読むこと、そして本を語り合うことの素晴らしさを描いた作品 映画『ジェイン・オースティンの読書会』は、年齢も背景もさまざまな5人の女性たちと、SFマニアの若い男性1人が、読書会を通じて自分の人生を豊かにする物語。一番愛情を注いでいた犬を亡くし…

予言はどこに行き着くのか/『スーパーチューズデー 正義を売った日』

どこかで見たことのあるような陰謀や駆け引き 『スーパーチューズデー 正義を売った日』は、アメリカ大統領選挙の民主党予備選挙を舞台とした作品。大統領選挙への立候補を目指す州知事の選挙キャンペーンチームで働く主人公が、ふとしたきっかけで陰謀や駆…

理想郷までの道のりは遠いけど/『ドラえもん のび太の日本誕生』

家出からはじまる物語 また、ドラえもん映画で恐縮です。『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』の公開日と重なりましたが、この記事は1989年春に公開された『ドラえもん のび太の日本誕生』についての記事です。『新・のび太の日本誕生』の公開日ということを…

もうひとつの「悲しみよ、こんにちは」/『サガン 悲しみよ、こんにちは』

もうひとつの「悲しみよ、こんにちは」 フランスソワーズ・サガンは18歳のとき、小説『悲しみよ、こんにちは』を発表して衝撃的なデビューを果たす。この小説の発表によって、彼女は一躍、膨大な富と世界的名声を手に入れる。しかし、彼女の人生は『悲しみよ…

不条理、それは我々の人生そのものかもしれない/『シリアスマン』

我々の人生は不条理以外の何物でもない 映画『シリアスマン』は、人生の不条理をこれでもかと描いた作品。人生は不条理な不幸に満ちていて、人間がどうあがいても、やがて訪れる終末に立ち向かうことなどできないのかもしれないということを、これでもかと見…

どんな環境でも自分の職分に忠実で誠実であるか/『大統領の料理人』

フランス料理にはあまり縁がない わたしはフランス料理にはあまり縁がない。というより、フランス料理に限らず、あまり豪勢で華やかな料理を食べるということがそれほどない。華やかな料理を口にするのは、結婚披露宴とかかしこまった会食とかそれくらいの(…

友情と勇気を持って不正義へ立ち向かえ/『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』

ベスト・オブ・ベストの映画という位置付け この映画のタイトルは「小宇宙戦争」と書いて「リトルスターウォーズ」と読む。その名前の通り「スターウォーズ」をもじったものだが、宇宙空間での戦闘シーンがあり、遠い宇宙の惑星に乗り込んでいくなど、宇宙を…

映画日記を書きます。

映画日記を書きます。管理人の「のび」が映画を観た感想文を書いて、置いておく場所です。 もともとは、はてなダイアリーに『誤読と曲解の日々』というブログをやってまして、そこに読書日記や趣味の文具について、さらには身辺雑記などあれやこれやを書いま…