誤読と曲解の映画日記

映画鑑賞日記です。

オリンピックばかり観ていた/『誤読と曲解の映画日記』2018年2月のまとめ

オリンピックばかり観ていた/『誤読と曲解の映画日記』2018年2月のまとめ:目次

  • ピョンチャンオリンピックばかり観ていた
  • 『誤読と曲解の映画日記』今月のまとめ
  • 『誤読と曲解の読書日記』今月のまとめ
  • 管理人からのお知らせ
    • ①カテゴリーを充実させました
    • ②3月の更新は休みます

ピョンチャンオリンピックばかり観ていた

ピョンチャンオリンピックばかり観ていて、映画を観る時間が確保できませんでした。
せっかくの機会だからと、ウィンタースポーツをテーマにした映画を観ようとも思い立ちませんでした。そう思い立ったのは、オリンピックが終わったあとのことです。

ウィンタースポーツに限らず、スポーツをテーマにした映画は多々あります。
人間ドラマを見るのなら映画を見た方がいいのでしょうが、競技や試合のシーンとなると、やはり実際の競技の方に軍配が上がってしまいますね。

やはり、事前に書いたシナリオがあって、大体の結末が予測できる映画よりも、試合の展開や勝負の行方を完全に予測できない実際の試合の方が圧倒的に興奮し、集中できるからでしょうか。

それでは、今月のまとめをどうぞ。

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親指をしゃぶる自分を飾らずに世界にさらせ/『サムサッカー』

親指をしゃぶる自分を飾らずに世界にさらせ/『サムサッカー』:目次

  • じんわりとしたさわやかさをもたらす物語
  • ただ、親指をしゃぶる癖が抜けないだけ
  • ジャスティンを取り巻く普通の平凡な大人たち
  • ありのままの自分を飾らずに世界にさらすこと
  • 映画の概要・受賞歴など
  • 参考リンク

じんわりとしたさわやかさをもたらす物語

映画『サムサッカー』は、十七歳の少年ジャスティンの青春を描く物語。ジャスティンは常に自分に苛立ち、そんな自分を良い方向に変えたいともがいている。ありのままの自分が、自身の力で未来をつかみとることの大切さを描く物語とも言えるだろう。

主人公のジャスティンは、親指をしゃぶる癖が抜けない17歳の高校生。あるときジャスティンは歯医者のペリー先生からあやしげな催眠術をかけられる。親指をしゃぶる癖は治ったものの、今度は極端な行動に走ってしまい、ADHD注意欠陥多動性障害)と診断される。そこで投薬をはじめたジャスティンは次第に活動的にあり、弁論クラブの地区大会で優勝するほどの活躍を見せるようになるが……、というストーリーだ。

わたしはこの物語をそれほど期待しないで観たのだが、ジャスティンが自分を変えたいと必死にもがいている姿を、気がつけば見守るような気持ちで観ていた。17歳の高校生だからこその不安と悩みにとらわれ、そして自己愛に満ちたジャスティンの姿は、かつて17歳だったわたしたちの姿でもあるからだろう。

わたしはどちらかといえばジャスティンの両親や先生に近い方の年齢なので、思わずジャスティンの危うさをハラハラしながら、そっちの方向に進むなと思いながら観ていた。その一方で、ジャスティンもまた傷つきながら、あるべき方向へ必死に舵取りをする姿を観ながら、これなら大丈夫な方向に進むかもしれないと思ったのもたしかだ。

他人から見ればそこまで深刻ではないが、でも本人たちにとっては深刻な問題を抱えながらも、未来に向かってどのように生きるか悩みながら前へともがくように進むジャスティンの姿が、最後にじんわりとしたさわやかさをもたらす物語である。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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わたしたちもまた少しずつしか伝えられない/『潜水服は蝶の夢を見る』

わたしたちもまた少しずつしか伝えられない/『潜水服は蝶の夢を見る』:目次

  • 伝えるということを問う物語
  • わたしたちもまた少しずつしか伝えられない
  • 蛇足的な想像
  • 映画の概要・受賞歴など
  • 参考リンク

伝えるということを問う物語

映画『潜水服は蝶の夢を見る』。潜水服を着たかのような不自由な状況に置かれてしまっても、記憶と想像力がある限り、人間の心はどこまでも自由に蝶のように羽ばたくことができる。同時に、人はどんなに悲惨な状況に陥っても自分の感情や思いを言葉にして伝えることができ、それが周囲の人々の心を響かせることができる。この物語が伝えたいメッセージは、こう言い表すことができるだろう。

この物語の主人公はファッション誌『ELLE』の編集長であるジャン=ドミニク・ボビー。彼は息子とともに新車のドライブをしている最中に脳溢血に襲われてしまう。3週間の昏睡状態から目覚めたあと、なんとか一命をとりとめたものの、頭から足の先までの全身に麻痺が残ってしまった。

そんなジャン=ドミニク・ボビーに残されたのは意識と聴覚、そして左目を動かすことだけだった。そんな彼は言語聴覚士の指導により、まばたきのみで言葉を伝える方法を覚えてゆく。イエスならまばたき1回、ノーならまばたき2回というふうに。そこからさらに言葉を伝える方法まで獲得してゆき……という物語だ。

この映画には感動とはまた違う驚きがある。他人と意志が伝達できないかのように見える状態の障害者にも想像力や感情があり、恐ろしく制限され、時間のかかる方法ではあるが、その想像力や気持ちを他人に伝えることができるのだという驚きと発見がある。伝えるということが、人間にとってどういうものであるか。わたしたちはそんな疑問を突きつけられるのだ。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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雪には人間を切実にさせる力があるのかもしれないの巻/『誤読と曲解の映画日記』2018年1月のまとめ

雪には人間を切実にさせる力があるのかもしれないの巻/『誤読と曲解の映画日記』2018年1月のまとめ:目次

  • 雪の中を追いかけたり逃げ出したり
  • 『誤読と曲解の映画日記』今月のまとめ
  • 『誤読と曲解の読書日記』今月のまとめ
  • 管理人からのお知らせ/ほしい物リストから本が届きました

雪の中を追いかけたり逃げ出したり

この冬はとても寒いですねえ。わたしが住むのは九州の南の方ですが、それでもこの冬は今まで経験したことのない寒さに見舞われています。とにかく寒いし冷たい。春になるのが待ち遠しくてたまりません。

しかし、わたしの住んでいるあたりは雪がめったに降ることはないので、一面の冬景色を見回すという経験がないのです。見渡す限り雪の広がる風景とは、いったいどういう景色なのでしょうか。だから、わたしはテレビ番組や映画でしか、雪景色というものを見たことがないのです。

雪景色が印象的な映画といって、ぱっと思いつくのは『ファーゴ』や『八甲田山』あたりですかねえ。どちらも人がバタバタと死んでいく映画ですが。あとは『網走番外地』でしょうか。『網走番外地』は雪の中を逃げてゆく話ですが、いやあ、あれだけの雪の中、自分だったら途中で凍え死んでしまうなあと思った記憶があります。

これらの雪に関する映画について考えると、雪には人間を切実にさせる力があるのかもしれないですね。

それでは、今月のまとめをどうぞ。

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沈黙と静寂の中にあふれる濃密な愛情/『キャロル』

沈黙と静寂の中にあふれる濃密な愛情/『キャロル』:目次

  • ちょっと怖いなあと思ってしまうくらいの濃密な恋愛
  • 静寂と沈黙の中の愛情
  • キャロルの強い引力
  • 映画の概要・受賞歴など
  • 参考リンク

ちょっと怖いなあと思ってしまうくらいの濃密な恋愛

映画『キャロル』は、女性同士の濃密な愛を描いた物語。物語は1950年代のニューヨークが舞台。デパートの店員テレーズとお客としてやってきたキャロルとのあいだの女性同士の恋愛を描く。静謐と沈黙が世界を美しく支配する中で、ふたりの女性の濃密な愛情がそこかしこに満ちているのを、わたしたちは感じることができる。

クリスマス目前のデパートのおもちゃ売り場で働くテレーズの前に現れたのは、幼い娘へのクリスマスプレゼントを選びにやってきたキャロルだった。キャロルが売り場に置き忘れた手袋を、テレーズがキャロルの自宅へと届けたことから、ふたりは少しずつ親密になってゆく……、というストーリーである。

映画『キャロル』に描かれた女性同士の恋愛を男性のわたしが見ても、そこにある濃密な愛情はうらやましいほどに「いいなあ」と思えるものがあり、そして同時に、ここまでもう密だと「ちょっと怖いなあ」と感じるものもある。

「ちょっと怖いなあ」と思うのは、ここに描かれているのが同性愛だからというわけではない。それは異性同士の恋愛にもつきものの、相手を深く愛し過ぎるときのような危うさである。あまりにも深い愛情が、むしろその関係を破綻へ向かって進ませてしまうんじゃないかという危うささえも感じさせるのである。そういった面が描かれているからこそ、この物語は普遍的な愛を描いているのだとも言えるだろう。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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