誤読と曲解の映画日記

映画鑑賞日記です。

毎日が地味でささやかだから|パラダイスの夕暮れ

毎日が地味でささやかだから|パラダイスの夕暮れ|目次

この年末年始はカウリスマキ作品を

去年、prime videoにアキ・カウリスマキ監督の作品が一気に入りました。そこで、せっかくだからこの年末年始に、未鑑賞の作品を含めてカウリスマキ作品を一気に観ようという企てを思いつきました。その第1弾目として『パラダイスの夕暮れ』を。

『パラダイスの夕暮れ』について

1986年制作の映画。監督・脚本はアキ・カウリスマキフィンランド後の原題は"Varjoja paratiisissa"、英語では"Shadows in Paradise"。

ゴミ収集車運転手のニカンデルと、スーパーのレジ係のイロナとのラブストーリー。『真夜中の虹』、『マッチ工場の少女』とあわせて、いわゆる<労働者三部作>の一作目。

ニカンデルはイロナに好意を寄せていて、彼女をデートに誘うが、うまくいかない。一方のイロナはスーパーをクビになり、店の小型金庫を盗んだ挙句、ニカンデルのところへ転がり込んでくる、というあらすじ。

硬質で無機質

登場人物たちがみんなニコリとも笑わずに、不機嫌そうな顔のまま進行するのが良い。邦画みたいに無駄に叫ばないし、セリフですべてを説明しないから。そういった硬質で無機質な映像で構成されているからこそ、逆に人物の心境や先の展開への想像も広がる。

あと、劇中やエンディングでも流れるフィンランド演歌としか言いようのない曲も味わい深かった。字幕版だから歌詞は表示されるんだけど、全編聴いてみたい。

この物語、最後にはエストニアの首都タリン行きのフェリーが出てくるんだけど(ネタバレにならない程度のギリギリの表現)、検索してみるとめちゃくちゃきれいな都市で驚き。このタリンへはヘルシンキからフェリーで2時間ちょいで行けるらしい。

わたしの教養が足りんので初めて知ったんだけど、「タリン」って名前は「デンマーク人の城」って意味。600年間デンマークに占領されてたから。

毎日が地味でささやかだから

印象に残った点は、ニカンデルには冒頭の場面で年配の同僚から、ゴミ収集の新しい会社を起こすから一緒に来ないかと誘われている。この同僚は銀行などに話をつけてきて、それなりに優秀と思われる。

そんな同僚に見込まれて、新しい会社に来ないかと誘われているので、ニカンデルも見る人から見ればそれなりに真面目で優秀な仕事ぶりなのかもしれない。

けれど、せっかくの誘いも不幸な成り行きからフイになってしまったどころか、いろいろあって留置場まで拘束されてしまうニカンデルは、このあたり運に見放されているんだなと思わされる映画の冒頭だった。

このあたりのニカンデルが不幸や不運に見舞われるようなこと、実はわたしたちみたいなそれほど優秀でもない、地味に毎日を送っているような一般の市民でも起こっていることでもあるよね。

人生を好転させるようなチャンスが目の前にあったのに、予期せぬ不幸でつかみそこねた、みたいな。だからこそ、最後のニカンデルとイロナの、自分たちの手で選んだ未来を応援してしまうのだろう。

これから先の二人も決してバラ色の未来なんて見えないけど、それなりにもがきながら、二人の人生を歩むのだろうと思わせます。わたしたちみたいな、毎日が地味でささやかな暮らしに彩られた人生を描く一本です。

参考リンク

1)パラダイスの夕暮れ/KINENOTE
www.kinenote.com

2)パラダイスの夕暮れ/Filmarks
filmarks.com

3)タリン歴史地区エストニア 世界遺産|阪急交通社
www.hankyu-travel.com

・- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
・『誤読と曲解の映画日記』管理人:のび
・X(旧twitter)アカウント:https://twitter.com/nobitter73
・問い合わせ用メールアドレス:nobitter73 [at] icloud.com
※[at]の部分を半角の@に変更して、前後のスペースを詰めてください。
Amazon ほしい物リスト
https://www.amazon.co.jp/registry/wishlist/8GE8060YNEQV
・姉妹サイト/『誤読と曲解の読書日記』
nobitter73.hatenadiary.jp
・- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -