誤読と曲解の映画日記

映画鑑賞日記です。

「コンプレックス」が原動力/2017年2月のまとめ

『誤読と曲解の映画日記』:2017年2月のまとめ目次

  • 「コンプレックス」が原動力
  • 『誤読と曲解の映画日記』今月のまとめ
  • 『誤読と曲解の読書日記』今月のまとめ
  • 管理人よりお知らせ:Amazonほしい物リストをつくりました

「コンプレックス」が原動力

そもそも、なぜわたしは映画を観た感想をブログを書いているのだろうという話です。そういえば、ブログを立ち上げた理由やブログを書き続ける理由など、これまでどこにも書いてないなと気づいたので、自分用のメモとして書いておこうと。

結論から言うと、「コンプレックス」、劣等感と言い換えてもいいのですが、そういうものが根底にあるからなのではないか、ということに行き着きました。

他の人にとっては、もうとっくに観ていて当然の作品を自分はまだ観ていない。自分には映画に関する知識や常識が他の人よりも大きく欠落している。そんな「コンプレックス」が、自分の根底にあるし、最低でも月2回は映画のブログを書く原動力になってるのではないか。

それに加え、月2回は映画の感想をブログに書くために、最低でも月に2本以上の映画を観なければならない。つまりは月2本以上の映画を観ることを、自分にノルマとして課しているわけです。どうしても意図的に時間をとって映画を観なければならないという状況に、自分を追い込んでいるわけですね(そんなおおげさな行為でもないですが)。それで数をこなして、観たことのある作品を増やしていくと。

さらには、記憶力が悪いということもある。映画の作品名を聞いて、その大まかなストーリーの流れや結末を忘れてしまっていることはしょっちゅうだし、役名はもちろん、出演している俳優の名前すら出てこないこともある。

じゃあ、映画ブログを書きはじめて、コンプレックスを克服し、記憶力も良くなったのかというと、そんなことはないんですけどね。実に困ったことです。


それでは、今月の『誤読と曲解の映画日記』と『誤読と曲解の読書日記』のまとめです。

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"YES"は前に進むためのスイッチ/『イエスマン "YES"は人生のパスワード』

"YES"は前に進むためのスイッチ/『イエスマン "YES"は人生のパスワード』:目次

  • 不思議な説得力のある物語
  • 「YES」と言った先に
  • 行動を促すためのスイッチ
  • 映画の概要・受賞歴など
  • 参考リンク

不思議な説得力のある物語

人生は決断の連続だと言える。大きなことから些細なことまで、わたしたちは常に決断に迫られる。そんなときに、こころよく「YES」と答えられればいいが、そうすべてに「YES」と答えられるわけではない。どうしても時間的金銭的都合がつかないという理由や、性格の合わない人物やどうしても嫌いな人物がいるからという理由、あるいは単に気が進まなかったり、面倒くさかったりというような理由で、言い訳を添えながら「NO」と答えるか、適当に曖昧なことを言って返事や決断を先延ばしにしまうことがある。

映画『イエスマン "YES"は人生のパスワード』の主人公カール・アレンは、個人融資の審査や友達からの誘いなど、とにかく適当な理由をつけて「NO」と断る銀行員。3年前に離婚して以来、カールはひとりで家のソファに寝転んでテレビをただぼんやりと眺めるだけの、他人から見れば孤独で無気力な生活を送っていた。そんなカールは、上司のノーマンから昇進がダメになった話を伝えられ、友人ピーターの婚約にも素直に喜べず、ついに婚約パーティーすらすっぽかす。

さすがに怒ったピーターから「もしお前が生き方を変えない限り、孤独のまま終わる人生が待っている」とまで言われ、突き放されたカールは自分が老人になって孤独のまま死んでゆく悪夢まで見てしまう。そんなとき、カールは偶然にも再会した古い友人のニックから誘われたセミナーに参加し、ありとあらゆる機会に「YES」と答えなければならない誓いを立ててしまう……、という物語だ。

そのせいで、カールの元に幸運が舞い込むが、同時に痛い目にも会うし、ひどい目にも遭遇してしまう。それでも、カールは傷をつくりながら、ことあるごとに「YES」と答え続ける。コメディ映画なので、何も考えなくても終始楽しく面白く観てしまうが、観終わったあとに「自分も”YES”と答え続けてみようかな……」との思いが頭をよぎってしまうほど、不思議な説得力のある物語だ。
Yes


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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永遠に叶うことのない夢/『サンセット大通り』

永遠に叶うことのない夢/『サンセット大通り』:目次

  • もがきながら進む方向が誤っているゆえの破滅
  • 永遠に叶うことのない夢を抱いた人間たち
  • 破滅へのレールを敷いたマックスとベティ
  • ひどく間違ったやさしさと愛情
  • 太陽が沈み、夜の闇が訪れる『サンセット大通り』
  • 映画の概要・受賞歴など
  • 参考リンク

もがきながら進む方向が誤っているゆえの破滅

映画『サンセット大通り』は、永遠に叶うことのない夢を抱えたふたりが出会ってしまったことで、まっすぐ破滅へと突き進んでしまう物語だと言えるだろう。過去の栄光にすがりつく人間と、破れた夢にぐずぐず未練を抱えた人間とが出会い、少しずつ破滅へ向かってゆく過程を描いている。それゆえに、この物語はひどく哀しくて恐ろしい。

サンセット大通りにある屋敷のプールで、ひとりの男の死体が浮いているのが発見される。パトカーやマスメディアの車が、猛スピードでサンセット通りを駆け抜け、プールに浮かぶ死体の元に駆けつける。男の身体には銃弾を撃ち込まれた痕。不吉で不穏な予感をわたしたちに抱かせ、物語は幕を開ける。

本作の製作は1950年。実に60年以上昔の作品にもかかわらず、そこに描かれたものは、今なおわたしたちがそこかしこで直面する光景である。愚かしさや弱さを抱えた人間が、なんとか現状から抜け出そうともがくが、もがきながら進む方向が誤っているゆえに、少しずつ破滅へと自らを導いている光景だ。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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ハズレを引くこと/2017年1月のまとめ

『誤読と曲解の映画日記』:2017年1月のまとめ目次

  • ハズレを引くこと
  • 『誤読と曲解の映画日記』今月のまとめ
  • 『誤読と曲解の読書日記』今月のまとめ

ハズレを引くこと

1月も最終日になりましたが、今年最初の今月のまとめです。今年もよろしくお願いいたします。


さて、このあいだ、レンタルしたDVDでとある映画を観たのですが、ひさびさに「あ、これはハズレだね」という作品でした。ひさびさにハズレを引いたので、むしろ新鮮ささえ感じました。映画に限らず読書でもそうですが、ある程度はハズレを引くことも経験として必要なことです。

しかし、なぜこの映画が自分にとってハズレだと感じたのか、この映画のどの部分が自分にとってハズレなのか、ということをあれこれ考えることが、ハズレをより良い経験とする行為ではないでしょうか。

また、自分にとってはハズレであっても、他の人にとってみたら、どこかに心揺さぶられ、感動を覚え、ひょっとしたら人生の針路を決定づける一本だという可能性もあります。

自分にとってハズレだったという一点で、その映画の内容や価値を独断的に判断し、「この映画はゴミだ、クズだ」とけなすよりは、その作品のどこがハズレだと感じたのかを自分なりに検証することは、それなりに意味のあることではないでしょうか。だから、そのハズレの作品を、頭ごなしにけちょんけちょんにいうことは控えますが。

と言いつつ、以前あるドラえもんの映画を観たとき、あまりにも設定やキャラクターの把握が雑なので、ツイッターでけちょんけちょんに言って、このブログにも掲載していますが。。。しかも、その記事がアクセス数では割と上位に来ています。。。

それでは、今月のまとめです。

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ひどく手遅れだったのかもしれないが/『トト・ザ・ヒーロー』

ひどく手遅れだったのかもしれないが/『トト・ザ・ヒーロー』:目次

  • 自分で自分の人生に評価を下してはいけない
  • 誰とも思い出を分かち合うことができなかったトマ
  • 悲しみを抱いているからこそ
  • ひどく手遅れだったのかもしれないが
  • 映画の概要・受賞歴など
  • 参考リンク

自分で自分の人生に評価を下してはいけない

映画『トト・ザ・ヒーロー』は、自分で自分の人生に評価を下してはいけないし、自分にとっては何気ないことでも、他人から見ればそれはかけがえのない幸福なのかもしれないことである、ということをわたしたちに突きつける物語だと言えるだろう。

この物語の主人公トマは、老人ホームで孤独に暮らしていた。あるとき、自分の生涯を振り返る。自分の人生には幸せなことなど何ひとつなかった、と。それというのも、トマが生まれた産院が火事に遭い、そのときの混乱で向かいのカント家のアルフレッドと取り違えられてしまったからだと、トマ自身は信じているからだ。

そのためにトマの本当の人生や幸福はアルフレッドに奪われてしまった。アルフレッドのせいで、自分の人生は孤独で悲惨な人生になってしまった。そんな恨みを抱いて人生を送ってきたトマは、アルフレッドを殺して復讐を果たすことを決意する…...というストーリー。

わたしたちの目から見ると、トマの人生が愚かで惨めな人生に見える。トマ自身も子どもの頃から老人になるまでずっと、自身の人生を愚かで惨めな人生だと考えていた。でも、物語の最後にトマと同じく老人になったアルフレッドから見たトマの人生に触れたとき、トマはおそらくはそれまでの自分の人生が一変して、幸福で光り輝いたものに見えたに違いない。なぜなら、トマが人生の最後に下したある大きな決断が、それを物語っているからだ。
Merry Go Round


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

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