「オフビートな笑い」がわからない
「オフビートな笑い」がわからない:目次
「オフビートな笑い」とは何か?
ある短編小説集の解説を読んでいたとき、たまたま「オフビートな笑い」という言葉に出くわした。
作者の特徴のひとつとして、「オフビートな笑い」が挙げられていたのだ。それでふと、疑問に思ったのだ。「オフビートな笑い」とはなんぞや? と。
「オフビートな笑い」という表現、現状では使用例の95%くらいが映画の紹介や批評の場で使われている(当社調べ)。むしろ、映画以外での使用例などほとんど見聞きしたことがない。
そのため、本の解説に予期せず「オフビートな笑い」なる表現が出てきたので、気になったのだ。
※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。
言いたいことはわかるけど
そもそも「オフビート」という言葉は音楽用語のようだ。
コトバンク/オフビート
kotobank.jp
オフビートとは「音楽で、通常とははずれたところに強拍があること。また、そのリズム。ジャズ演奏で特徴的に現れる。」
ジャズはよく聴くので、言いたいことはわからなくはない。
ところで、「オフビートな笑い」が散りばめられた作品として、よく名前が挙がる(というか、検索結果で出てくる)のが、ジム・ジャームッシュやアキ・カウリスマキである。
わたしもそれらの監督の作品はいくつか観ているので、意味するところはなんとなくわかる。
けど、それらの作品を観ながら、どこがどう「オフビートな笑い」なのか説明しろと言われると、「これがオフビートな笑いだ」と指摘することはけっこう難しい気がする。
たとえば、「はい、みなさん! ここが笑うところですよ!」と、笑いどころがわかりやすく提示されるドタバタ喜劇ならば話は簡単だ。『男はつらいよ』シリーズを見ながら、笑いの場面を明確に指摘できることを思えばわかりやすいだろう。
じわじわとくる可笑しみ
けれども「オフビートな笑い」とは、そういたドタバタ喜劇的な笑いとは異なるものである。ドタバタ喜劇的な笑いから「はずれたところ」にある脱臼的な笑いが、「オフビートな笑い」であることの第一要件だからだ。
むしろ「オフビートな笑い」とは、世間や常識から外れた人がもたらす笑いの定石から外れた言動にあるからこそ、じわじわとくる可笑しみ、みたいなニュアンスになるのかもしれない。
そこには物悲しさに満ちた、ペーソスを感じる笑いや、皮肉めいたところのある、アイロニカルな笑いみたいなものも織り込まれてはいるが、それだけではないものも多分に含まれている。
だからこそ、「オフビートな笑い」という独立した表現が使われるのだろう。
「世間や常識からずれた人がもたらす笑いの定石から外れた言動」に満ちた映画として、わたしは『ナポレオン・ダイナマイト』を挙げたい。じわじわとくる笑いに包まれた映画だ。「オフビートな笑い」を理解したければ『ナポレオン・ダイナマイト』を観ればいい。
参考リンク
1)『誤読と曲解の映画日記』:ぱっとしないけれど、シリアスでリアルな日常/『ナポレオン・ダイナマイト』
nobitter73.hatenablog.com
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『誤読と曲解の映画日記』管理人:のび
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