読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

誤読と曲解の映画日記

映画鑑賞日記です。

脱獄と深い森とが生んだどこかおかしな友情/『ダウン・バイ・ロー』

どこかおかしな友情

ジム・ジャームッシュ監督の作品『ダウン・バイ・ロー』。『パーマネント・バケーション』や『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に比べ、ストーリー性はよりはっきりとしている。

まずこの作品に登場するのは、ポン引きをしているチンピラのジャックとラジオ局を転々とする落ち目のDJザックである。ふとしたことからこのふたりは悪い連中にはめられてしまい、無実の罪で刑務所に入れられてしまう。そこで出会ったのが、殺人(といっても、偶発的な事故みたいなものだが)を犯して刑務所に入ったイタリア人ロベルト。

この3人は、刑務所からの脱獄に成功する。深い森の中の湿地や川をさまよい続ける。3人はときに言い争い、決別するが、空腹や疲れから再び一緒になって逃亡劇を続ける。逃走しながらも男3人の間に、どこかおかしな友情が芽生える。そんな3人はやがて一軒のカフェを見つけ、それぞれの道を歩みはじめる。『ダウン・バイ・ロー』はそのようなストーリーだ。

映画のタイトルにもなっている『ダウン・バイ・ロー』(”Down By Law”)とは、英語のスラングで「親しい兄弟のような間柄」というような意味があるようだ。この映画に登場するチンピラのジャックと落ち目のDJザック、それにイタリア人のロベルトは、刑務所の同じ檻の中で出会った。

はじめはみなギクシャクしていたが、一緒に刑務所を脱獄し、森や川を逃走する中で、どこかおかしな友情が芽生えはじめることからきたタイトルなのかもしれない。この物語は、3人の男にどこかおかしな友情が芽生え、それが枝分かれする物語だ。ラストに映し出される、大きくふたつに分かれる森の中の道のように。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

モノクロームの森や川

落ち目のDJザックとチンピラのジャックはふたりとも、どうしようもなくダラダラと刹那的に生きている。物語のはじめの部分、ザックとジャックが登場し、その日常が描かれるあたりは、狂おしいほどの気だるさと人生への倦怠が満ちあふれている。ザックもジャックも、自分自身や人生を変えたいと願っているが、その糸口をつかめないままの日常を生きているように見える。

ところが、このふたりに予期せぬ決定的な出来事がふりかかる。無実の罪で刑務所に入れられてしまうのだ。

人生の流れを力づくでねじ曲げられることは、人生の中で起こる。自分でも考えてもいなかったことが、突然自分の身に降りかかり、人生の流れ、あるいは運命と呼ぶものを大きく方向転換させることがある。そしてそれは多くの場合、悪い方向に進むことが多い。

もちろん、それは無実の罪で刑務所に入れらてしまうということとは限らないが、我々の人生においてもときおり起こることでもある。そして、できれば避けて通りたいと願うような悪い出来事が我々を深くとらえ、刑務所に入れられて自由に身動きできないように、我々を強くその悪い出来事に縛りつけることもある。

刑務所という場所は、自力では抜け出せない場所であり、強制的に閉じ込められる場所である。なんとかそこから抜け出したいと強く願う場所だ。ジャックとザック、そしてロベルトはそんな刑務所を抜け出すことに成功するが、今度は深い森と湿地、それにワニの生息する川が行く手をはばむ。

せっかく刑務所から逃れることができたにもかかわらず、森の中で3人は出口を見つけることができないまま空腹と疲労に苛立ち、仲間割れしてしまう。我々をとららえた悪い出来事は、簡単には我々を離してはくれない。それでも3人は空腹と食欲によって再び結びつけられ、出口を求めて旅を続ける。

モノクロームの画面に映し出される森や川が印象的である。どこか現実感を失った森や川。モノクロームに染まる森の木立はどこまでも深そうで、モノクロームに染まる川はどこまで行ったとしても、どこにもたどり着けそうにもない。けっきょくは悪い出来事がこの身に降りかかってしまえば、そこから自力で抜け出すことはできないのかもしれない。モノクロームの森や川は、そんな不安をかきたてる。

ダメなところだらけの人間たちの映画

力づくで人生の方向をねじ曲げられたことにもがいて、なんとか人生の新しい方向を見つけ出そうと、森を歩きまわり、川に浮かべたボートを漕ぐ。3人はやがて森の中に道を見つけ出し、一軒の店を発見する。とても美しい女性が切り盛りする店で、ロベルトはこの女性と恋に落ちる。ジャックとザックも、久しぶりにまともな食事にありつき、きれいな服を身につけることができる。3人の人生が新しく生まれ変わる瞬間である。

それでも、ジャックとザックはその場所にとどまろうとしない。また、新しい場所を求めて歩きはじめる。新しく生まれ変わった自分がたどり着くべき場所を求めて。そんなふうにジャックとザックのふたりが、森の中で二手に分かれたそれぞれの道を行くラストシーンは、ささやかな希望を感じた。

完璧ではない人間、自分に満足していない人間、欠点だらけの人間。『ダウン・バイ・ロー』は、そんなダメなところだらけの人間たちが織り成すどこかおかしな友情を描いた一本である。自分自身の不完全さや欠点が目について、自分に自信がなくなって落ち込んだ気分のときに観ると、胸に沁みるのかもしれない。

参考

1)Yahoo!映画/『ダウン・バイ・ロー
movies.yahoo.co.jp

2)映画.com/『ダウン・バイ・ロー
eiga.com


このブログ管理人のtwitterのアカウントは、nobitter73です。