誤読と曲解の映画日記

映画鑑賞日記です。

夜明けの光の中に/『ダウントン・アビー(映画版)』

夜明けの光の中に/『ダウントン・アビー(映画版)』:目次

一筋縄ではいかない屈折した人間模様

 わたしは『ダウントン・アビー』のテレビシリーズを熱心に観ていたひとりだ。そこで描かれる貴族と使用人たちの人間模様が実に魅力的で、約50分前後の物語があっという間に過ぎていった。

 『ダウントン・アビー』(テレビシリーズ版)は、1912年のタイタニック号沈没事故から第一次世界大戦アイルランド独立戦争などの歴史上の出来事や社会情勢を背景に、グランサム伯爵クローリー家と彼らに仕える使用人たちの人間模様を描いてきた。

 テレビシリーズの魅力はなんといっても、その人間模様だ。クローリー家や使用人の内部で互いに敵意や確執を抱えている。それが意地悪で陰湿な言動につながり、さらに敵意や確執が深まってゆく。一筋縄ではいかない屈折した関係性が絡まり合っているのだ。

 もちろんそこには家族間の情愛や、貴族と使用人を超えた信頼関係も存在する。そこがまたこの物語の救いであり、シリーズを通して登場人物たちの抱く敵対心や確執が溶けてゆく過程が、この物語の大いなる魅力であり、同時に推進力となるのだ。


※以下、ネタバレ的な要素が含まれています。

みんないい人になったなあ

 というわけで、テレビシリーズを観ていた人が映画版の『ダウントン・アビー』を見ると、あんなに仲違いしていた人々が互いに思いやりを持って仲良くしてる姿に「みんないい人になったなあ」と感慨深くなってしまうのは否めない。

 もちろん、いい人たちが出てきて仲良くするだけでは物語にならない。映画版では国王ジョージ5世の一行がクローリー家の邸宅であるダウントン・アビーを訪問することにより、ひと悶着もふた悶着も起こるという話になっている。

 たとえば、クローリー家当主ロバートの母ヴァイオレットは、王妃の女官をしているロバートの従妹と相続をめぐる確執を抱える。

 使用人からクローリー家の一員となったトムはアイルランド独立運動に関わり、今も君主制や貴族制に反対する共和制主義者。トムは怪しげな男と関わりを持ち、保安局の人間が周囲を嗅ぎまわる。

 また、国王の意向を笠に着た王家の使用人たちに対するクローリー家の使用人たちの反発と反抗は痛快である。特にモールズリーさん(わたしの一番好きなキャラだ)の張り切りと活躍(?)は、この物語で一番の笑いを提供し、緊張の糸をほぐす役割を果たす。

疾走する蒸気機関車

 この物語は疾走する蒸気機関車によって運ばれる郵便を描くことによって幕を開ける。鉄道と郵便に象徴される近代化はイギリス社会を大きく変化させ、貴族階級も多くが没落していった。クローリー家も例外ではなく、一家の経営を担う長女メアリーは、いまだ時代の大きな変化の中にあるダウントンアビーの将来を不安視する。

 それでも、物語の最後のダンスシーンはダウントン・アビーの行く末を暗示していて、わたしたちは夜明けの光の中に希望を見出すのだ。家族の情愛は時代に翻弄されることはないのだと。

参考リンク

1)映画.com/『ダウントン・アビー
eiga.com

2)Filmarks/『ダウントン・アビー
filmarks.com

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『誤読と曲解の映画日記』管理人:のび
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